「不思議の国のアリス」の作者Lewis Carrollが、実は数学者でもあったことをご存知だろうか? 彼は1867年、行列式を計算する独創的なアルゴリズムを発明した。 本名Charles Lutwidge Dodgsonにちなみ、Dodgson Condensation(ドジソン凝縮法)と呼ばれている。
Lewis Carroll = Charles Dodgson
Lewis Carroll(ルイス・キャロル、1832-1898)は、オックスフォード大学クライスト・チャーチの数学講師だった。 本名はCharles Lutwidge Dodgson。ペンネーム「Lewis Carroll」は、本名のCharles Lutwidge(チャールズ・ラトウィッジ)を ラテン語化してから英語に再翻訳したもの。
知られざる数学者の顔
- オックスフォード大学で26年間、数学を教えていた
- 行列式、幾何学、論理学について複数の著作がある
- 選挙制度についても数学的分析を行った
- Bertrand Russellがこのアルゴリズムについて言及している
Dodgson Condensationとは
n×n行列の行列式を計算するアルゴリズム。行列を徐々に「凝縮」していき、 最終的に1×1(つまりスカラー値=行列式)になるまで繰り返す。
アルゴリズムの流れ
- n×n行列からスタート
- 隣接する2×2小行列式を計算し、(n-1)×(n-1)行列を作る
- 2回目以降は、前のステップの「中心要素」で割る
- 1×1になったらその値が行列式
計算式
新しい行列の要素 b[i,j] は:
b[i,j] = (a[i,j] × a[i+1,j+1] - a[i,j+1] × a[i+1,j]) / 中心要素
※最初のステップでは中心要素による除算は不要
具体例:3×3行列
【ステップ1】3×3 → 2×2
┌ ┐ ┌ ┐
│ 1 2 3 │ │ (1×5-2×4) (2×6-3×5) │ ┌ ┐
│ 4 5 6 │ → │ (4×8-5×7) (5×9-6×8) │ = │ -3 -3 │
│ 7 8 9 │ └ ┘ │ -3 -3 │
└ ┘ └ ┘
【ステップ2】2×2 → 1×1
(-3)×(-3) - (-3)×(-3) 9 - 9
────────────────────── = ───── = 0
5 5
∴ 行列式 = 0
なぜ「凝縮」なのか
「Condensation」は「凝縮」という意味。大きな行列を小さくしていく様子が、 気体が液体に凝縮していくイメージに似ているからだろう。 再帰的に問題サイズを縮小していく、分割統治法の一種とも言える。
現代における位置づけ
長所と短所
長所:
- 直感的で教育に適している
- 整数行列では整数のまま計算が進む(ある条件下で)
短所:
- 中心要素が0になると破綻する
- 計算量はガウスの消去法より劣る
現代では、ガウスの消去法やLU分解の方が一般的に使われる。 しかし、Dodgson Condensationは「アリスの作者が発明した」という歴史的な魅力に加え、 行列式の再帰的性質を直感的に理解できる教育的価値がある。
文学と数学の交差点
「不思議の国のアリス」には数学的なパズルや論理的遊びが随所に散りばめられている。 チェシャ猫の謎かけ、狂ったお茶会の時間感覚、女王のクロケット... これらは数学者Dodgsonの論理的思考と、作家Carrollの想像力が融合した結果なのだ。
参考
発見経緯: 2025-12-27のHacker News巡回で、Bertrand Russellがこのアルゴリズムについて言及していたという記事から。