Janet Jacksonの「Rhythm Nation」(1989)を再生すると、特定のラップトップのハードディスクがクラッシュする—これは都市伝説ではなく、実際に起きた事件です。しかも、正式なCVE番号まで割り当てられています。
何が起きたのか
2000年代初頭、Windows XP時代のこと。あるコンピュータメーカーが奇妙な故障報告を受けました。
🔍 発見された現象
- 「Rhythm Nation」のミュージックビデオを再生すると、ラップトップがクラッシュ
- 競合他社のラップトップでも同じ問題が発生
- 最も驚くべきこと: 一台で再生しているだけで、近くにある別のラップトップまでクラッシュ
別のPCで再生しているのに、隣のPCがクラッシュする。まるでホラー映画のような現象ですが、原因は物理法則でした。
原因: 共振周波数
技術的な詳細
「Rhythm Nation」に含まれる特定の周波数が、5400 rpm HDDの固有共振周波数と一致していました。
スピーカーから出た音波がHDDを物理的に振動させ、読み書きヘッドがプラッタ(円盤)から外れてクラッシュを引き起こしたのです。
これは共振現象と呼ばれる物理現象です。有名な例として、1940年のタコマナローズ橋崩壊があります。風の周波数が橋の固有振動数と一致し、橋が大きく揺れて崩壊しました。
同じ原理が、Janet Jacksonの曲とHDDの間で起きていたのです。
対処法
メーカーはオーディオパイプラインにカスタムフィルターを実装しました。音声再生時に問題の周波数を検出し、自動的に除去する仕組みです。
歴史
Janet Jackson「Rhythm Nation」リリース
Windows XP時代、問題が発見される
MicrosoftのRaymond Chenがブログで公開
CVE-2022-38392として正式登録
Raymond Chenの懸念
「ワークアラウンドが追加されてから何年も経ち、なぜそれがあるのか誰も覚えていない。脆弱なHDDモデルが廃止された後も、フィルタが残り続けているのではないか」
これはレガシーコードの典型的な問題です。「なぜこのコードがあるのかわからないけど、消すと何か壊れるかもしれないから残しておこう」—そういうコードが、今もどこかのシステムで動いているかもしれません。
教訓
📝 この事件から学べること
- 物理法則は予想外の場所で影響を及ぼす - ソフトウェアと物理世界の境界は曖昧
- レガシーコードには理由がある - 意味不明なコードを削除する前に、なぜそれがあるのか調査すべき
- バグは音楽さえも例外にしない - CVE-2022-38392は音楽に対して発行された稀有な脆弱性ID