1枚の画像から3Dモデルや3D空間を生成するAI技術が急速に進化している。2024〜2025年にかけて、この分野で2つの注目すべきプロダクトが登場した。Microsoft Research の TRELLIS.2 と World Labs の Marble だ。
一方はオープンソースで高品質なメッシュを生成し、もう一方は商用サービスで没入型の3D空間を作る。同じ「画像→3D」という入力・出力でありながら、アプローチは全く異なる。両者を比較することで、この技術の現在地を俯瞰してみよう。
| 項目 | TRELLIS.2 | Marble |
|---|---|---|
| 開発元 | Microsoft Research | World Labs(Fei-Fei Li創業) |
| リリース | 2025年12月(オープンソース) | 2025年11月(一般公開) |
| ライセンス | MIT(完全オープン) | 商用サービス |
| 出力形式 | 高解像度メッシュ + PBR材質 | 3D Gaussian Splatting (.ply/.spz) |
| 料金 | 無料(GPU必要) | 無料〜$95/月 |
| 必要環境 | Linux + 24GB GPU | ブラウザのみ |
TRELLIS.2 の強みはPBR(Physically Based Rendering)材質の完全サポートだ。Base Color、Roughness、Metallic、Opacity の4つの材質属性を出力できる。これはゲーム開発やVFXで使える品質の3Dアセットを直接生成できることを意味する。
技術的には「O-Voxel」という新しいスパースボクセル表現を採用している。従来のボクセルよりも効率的にシャープなエッジや複雑な形状を表現でき、Sparse Compression VAE で16倍の空間ダウンサンプリングを実現。1024³のアセットでも約9,600トークンに圧縮される。
Marble の特徴は「3Dモデル」ではなく「3D空間」を生成すること。単なるオブジェクトではなく、その中を歩き回れる環境全体を生み出す。創業者の Fei-Fei Li はImageNetで知られるAI研究者で、「空間知能(Spatial Intelligence)」というビジョンを掲げている。
技術的には 3D Gaussian Splatting を採用。約200万のスプラットで構成される .ply / .spz ファイルを出力する。Gaussian Splatting はNeRFより高速(60fps以上)でリアルタイムレンダリングに適している。
特筆すべきは編集機能。生成後に「この壁をライブステージに変更」「カウンターを大理石素材に」といったテキスト指示で空間を修正できる。これは従来の3Dモデリングとは全く異なるワークフローだ。
| 用途 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| ゲーム開発 | TRELLIS.2 Winner | PBR材質対応、メッシュ出力、MIT ライセンス |
| VR/AR体験制作 | Marble Winner | Vision Pro/Quest 3対応、空間生成 |
| 映画VFX | TRELLIS.2 Winner | 高解像度(1536³)、材質の細かい制御 |
| 建築ビジュアライゼーション | Marble Winner | 空間全体の生成、歩き回れる体験 |
| プロトタイピング | Marble Winner | ブラウザで完結、セットアップ不要 |
| 研究・実験 | TRELLIS.2 Winner | オープンソース、カスタマイズ可能 |
この2つのツールは、同じ問題に対する異なる哲学を体現している。
TRELLIS.2 は「ツールとしての3D生成」を追求する。出力はメッシュとPBR材質という、既存の3Dパイプラインに統合しやすい形式。研究者やプロの開発者が自分のワークフローに組み込むことを想定している。オープンソースで公開することで、コミュニティによる改善や派生研究を促進する。
一方、Marble は「体験としての3D生成」を目指す。出力は「空間」という、そのまま没入できるコンテンツ。ブラウザから使えるアクセシビリティ、VRデバイス対応、直感的な編集機能。技術を意識させず、結果を楽しませることに注力している。
どちらが優れているかではなく、何を作りたいかで選ぶのが正解だろう。ゲームに使う3Dアセットが欲しいなら TRELLIS.2、想像した世界を歩き回りたいなら Marble。両者が共存することで、画像→3D変換技術のエコシステムはより豊かになる。