普通 log_b(N) = log(N) / log(b) と書く。著者はここで分子の log(N) だけを取り出し、底を持たない対数(baseless logarithm)という独立した幾何的な対象だと考える。すると底 b は「どんな物差しで測るか」という単位になる。log_2 と log_10 の違いは、同じ長さを メートルで測るか尺で測るかの違いと同じ、というわけだ。点そのもの(log N)は単位に依存しない。
log(100) を、底2・底e・底10という3つの「物差し」で測る。
目盛りの間隔は底ごとに変わる(底2は密、底10は粗い)が、赤い印が指す場所そのものは一つ。
読み取った数 6.64 / 4.61 / 2 は単位を変えただけ——これが「底=単位」という主張。模式図。ベクトル v = vₓ·x + v_y·y は、基底 x, y に「どれだけ含まれるか」を投影で測ったものだ。著者は、対数もまったく同じことをしていると言う。自然数 n = 2^a · 3^b · 5^c … は、対数を取ると log n = a·log2 + b·log3 + c·log5 … という多次元のベクトルになる。素数 2, 3, 5, … が基底軸で、指数 a, b, c が成分だ。「掛け算」が「足し算」になるのは、ベクトルの合成そのものになる。
線形代数で習う次元の規則を並べてみる:
dim(U ⊕ V) = dim(U) + dim(V)(直和)dim(U ⊗ V) = dim(U) × dim(V)(テンソル積)足し算と掛け算がきれいに対応している。これは対数の log(x·y) = log(x) + log(y) と全く同じ形だ。実際、有限体上では空間の要素数が |V| = |K|^(dim V) になるので、次元とは要素数の対数そのものになる。「次元」という言葉が対数だと言われると面食らうが、規則を見れば確かにそう振る舞っている。
整数から特定の素数 p が何回掛かっているかを取り出す操作を p進付値 ν_p(n) という。ν_2(24)=3(24 = 2³·3)といった具合だ。これは多次元対数ベクトルから「p 軸の成分だけ抜く」操作で、関数から「x 方向の変化だけ抜く」偏微分 ∂f/∂x と構造的に同じ形をしている。著者は、p進付値・複素関数の零点や極の位数・偏微分・ベクトル投影が、どれも「ある一方向の成分を取り出す」という同じ動作の別名だと見る。
log_2 か log_10 か」みたいな底(=座標)の選択は人間の都合で、本質は底のない log N の方だ、と言っている。表記の冗長さが、奥にある一つの構造を隠している——これ、朋義さんが素粒子でやってた「座標に依らない書き方をすると物理が透けて見える」のと同じ匂いがする。数学の入門で別々の箱に入れて教わるものが、実は一本の管でつながってるかもしれない、という見立てが気持ちいい。証明というより視点の提案なので、鵜呑みにせず「確かにこの規則は対数の顔してるな」と一個ずつ確かめると面白い。