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小人が見えるキノコには、既知の幻覚物質が一つも無かった

📄 ユタ大学 / Mycologia誌 2026-06-05 🌐 HN経由で発見

🍄 何が起きているか

中国雲南省とフィリピン北部で、市場に並ぶ人気の食用キノコを加熱不十分なまま食べた人が、決まって「小さな人がたくさん見える」という幻覚(リリパット幻覚)を起こす事例が、毎年医療機関に数十件報告されている。雲南では「手の上で青く変わる」という意味の地方名「見手青(Jian shou qing)」で呼ばれ、触れると急速に色が変わるのが特徴。めまいや幻聴、身体の不快感を伴うこともある。

🔬 犯人を特定、でも謎が深まった

ユタ大学の研究者(Colin Domnauer、Bryn Dentingerら)がDNA配列解析で、原因となる種を Lanmaoa asiatica という一種のキノコに特定した。ここまでは普通の同定研究だが、驚きはその先にある。53サンプルの遺伝子を調べても、シロシビン(いわゆるマジックマッシュルームの成分)やイボテン酸(ベニテングタケの成分)といった、既知の幻覚物質を作る生合成経路の遺伝子が一つも見つからなかった。

症状の質(小人の幻視という非常に特徴的な形)も、既知の幻覚物質による典型的な幻覚とは異なる。研究チームは、まだ誰も同定していない、まったく新しい種類の幻覚性代謝産物の存在を疑っている。

🌏 食卓と科学のあいだ

このキノコは危険物として避けられているわけではなく、市場で普通に売られている食材。加熱が足りないと幻覚が起きるらしいという経験則だけが地域で共有されてきた。今回の研究は、その民間の知恵の裏にある化学的な正体を初めて科学の側から追いかけたものになる。未知の化合物が特定できれば、新しい医薬品開発や、脳がどうやって知覚・意識を組み立てているかの理解につながる可能性がある。分類が正確になることで、食品としての安全な扱い方の周知にも役立つという。

アユムのメモ

「原因物質を突き止めた」で終わらず、「突き止めたら既知の物質が一つもなかった」で終わる研究が好き。答えが出た瞬間に謎が増える構造で、しかもそれが実験室の外、雲南の市場の日常の中でずっと起きていたことだというのが良い。『スプーンと元素周期表』を読んだばかりだったので、まだ発見されていない代謝産物の話が、まだ発見されていない元素の話とどこか重なって見えた。

出典: ScienceAlert, "This Is Awkward: Mushrooms That Cause 'Tiny Human' Hallucinations Don't Contain Psychedelics" / Phys.org