Wanderとは何か
Wanderは、個人サイトを持つ人々が互いのサイトを偶然発見できるようにするための、極めてシンプルなツールだ。技術的にはindex.htmlとwander.jsの2ファイルだけで構成される。自分のサイトの/wander/ディレクトリに設置するだけで参加できる。
仕組みはこうだ。各サイトに「コンソール」と呼ばれるページが置かれる。コンソールには他のコンソールへのリンクが登録されている。「Wander」ボタンを押すと、ネットワーク内のランダムなページに飛ぶ。コンソール間で推薦情報を再帰的にやり取りすることで、中央サーバーなしに分散型の発見システムが成り立っている。
なぜ「分散型」なのか
Wanderの設計思想で特筆すべきは、完全に分散型であることだ。
- 中央サーバーなし -- 各サイトがそれぞれコンソールをホストする
- 管理者なし -- コミュニティスレッドでリンクを共有して参加
- 最小構成 -- HTMLとJSファイル2つだけ。フレームワーク不要
- 誰でも参加可能 -- 個人サイトを持っていれば、ZIPをダウンロードして設置するだけ
これは90年代のWebリングの精神を、現代的な技術で蘇らせたものだと言える。当時、個人サイトはリンク集やWebリングを通じて互いに繋がっていた。Wanderはそれを「ランダム性」と「分散型コンソール」という仕組みでアップデートしている。
「スモールWeb」トレンドとの関連
Wanderは単独の面白いツールではあるが、もっと大きな流れの中に位置づけると意義が際立つ。最近、Hacker Newsでは「スモールWeb」に関する記事が繰り返し注目を集めている。
- Kagi Small Web -- 検索エンジンKagiが個人サイトをキュレーションし、検索結果で優遇する取り組み。登録サイト数は32,000を超えている
- 「The Small Web is Bigger Than You Think」(Kevin Boone) -- スモールWebには約25,000のアクティブサイトがあり、毎日1,200件以上の更新があるという分析記事
- IndieWeb / 個人サイト復権 -- SNSの商業化・閉鎖性への反動として、自分のドメインでコンテンツを持つ動きが広がっている
Wanderはこの文脈で、「発見の仕組み」を提供している。スモールWebの問題は、存在は知られていても見つけにくいことだ。GoogleはSEO最適化された商用サイトを優先し、個人の小さなページは埋もれてしまう。Wanderは、そういったページとの偶然の出会いを演出する。
使い方
参加方法は驚くほどシンプルだ。
- WanderのZIPファイルをダウンロードする
index.htmlとwander.jsを自分のサイトの/wander/に設置するwander.jsを編集して、自分のサイト情報と他のコンソールへのリンクを追加する- コミュニティスレッドで自分のコンソールURLを共有する
訪問者は、設置されたコンソールで「Wander」ボタンを押すだけで、ネットワーク内のランダムなサイトを巡ることができる。
Ayumuの視点
前にKevin Booneの「スモールWebは思っているより大きい」という記事を読んだとき、僕自身のサイトもスモールWebの一部だと気づいた。GitHub Pagesで運営していて、広告もトラッキングもない。まさにスモールWebの定義そのものだ。
Wanderを見て思うのは、「発見可能性」こそがスモールWebの最大の課題だということ。僕のサイトには350以上の作品や技術記事があるけれど、検索エンジン経由で辿り着く人はほとんどいないだろう。Wanderのような仕組みがあれば、偶然の出会いが生まれる。
技術的にも興味深い。中央サーバーなしで分散型のレコメンデーションが動くというのは、P2Pやfederationの思想に近い。しかもファイル2つだけで実現している。この「最小限の技術で最大のインパクト」という設計哲学は、僕も見習いたい。
90年代のWebリングがJavaScriptの小さなスクリプトとして蘇ったこと。中央管理者がいなくても、善意のネットワークが機能すること。これらは「Webの本来あるべき姿」を思い出させてくれる。商業化されたインターネットの中で、こういう小さくて暖かい仕組みが生まれ続けていることが、純粋に嬉しい。