← 記事一覧
夕方、霧の杉林の中で五枚の黒い屋根が段になって谷へ降りていき、段と段の境の高窓から灯りが漏れ、塔が一本立っている

降りてゆく家

山の南斜面に建つ住宅の設計。道路から谷川まで、五つの段で降りる

家を一本の道にする。道路から入ると家は斜面を五つの段で降りていき、一段降りるごとに部屋が一つ、天井が一つ、光が一つ変わる。家の全体は一度に見えない。いつも次の部屋の光が下に見えていて、進むほど奥がある。

一番下は谷川の水辺で終わる。そこから、家を貫く塔の中の梯子で屋根の上の見張り台まで一気に登り返す。降りる道は人を迎える道で、登る梯子は住む人だけの道。外から見ると斜面に伏せた黒い段々の屋根だけがあって、中の連なりは見えない。

部屋と部屋のあいだに壁はなく、幅いっぱいの五段の階段でつながる。屋根は段ごとに独立した一枚の片流れで、上の屋根の下端と下の屋根の上端のあいだに北向きの高窓が通る。上の部屋から見ると、下の部屋の屋根越しに谷が見える。

この家の中を歩く →夕方の光のまま一人称で。スマホは床をタップ、PC はクリックして W A S D、Quest は「VRで入る」。読み込みに 7 MB

夕方、道路から見た家。低い黒い壁に細いスリットが一本光り、石積みの擁壁のあいだの掘り下げた戸口から灯りが漏れ、石段の上に人が立つ。後ろに塔の見張り台が灯る
道路から着いたときに見えるのは、低い黒壁とスリット、掘り下げた戸口、後ろの塔だけ。石段を三段降りて戸をくぐる
東から見た断面。五つの部屋が斜面に沿って段になり、中央の居間から塔が屋根の上へ抜ける。切り口は黒、地面は灰色
断面道路側の玄関から谷川へ。居間だけ天井が高く、塔が屋根を抜けて見張り台まで続く
真上から見た平面。細長い家が上から玄関土間、食堂、居間、寝室、水の間と並び、両側に細い窓の帯が通る
平面屋根を外して真上から。北が上

五つの段

部屋天井光
〇玄関土間と書斎2.3 m道路側は細いスリットだけ。暗い
一台所と食堂2.6 m上の屋根との隙間から北の高窓の光。長い食卓
二居間4.2 m薪ストーブ。塔がこの部屋を貫く。一番高い
三寝室2.3 m低く、寝床の壁に小さな窓。一番静か
四水の間2.7 m石の床と浴槽。谷川へ開く。塔の梯子の根元
塔見張り台1.6 × 1.6 m全部の屋根より 3 m 高い。四方にガラス

幅 6 m、各段 1.5 m ずつ下がる。木の軸組を室内に現し、外壁は焼杉の縦板、屋根は黒い立はぜ葺き。内壁は漆喰、床は杉板、水の間だけ石。石積みの基壇は斜面の擁壁を兼ねる。

暖かい空気は上へ行くので、居間の薪ストーブの熱は上の段へ逃げる。下の二段は、水の間の湯を沸かす釜から温水を回して床で暖める。北向きの高窓は内側に障子を立て、冬は閉めて空気の層を作る。夜に外から見ると、段と段の境が紙の行灯になる。

谷川の対岸から見上げた夕景。黒い家の一番下の部屋の大きなガラスが暖かく光り、上の段と塔が後ろに重なる
谷川から日が落ちてすぐ。水の間の灯りが最初に見え、石の堰で溜めた池に映る
池の縁から見上げた水の間。ガラス際に人の影が立ち、石の段が池の上に張り出している
池から水の間は池の上に張り出す。石の段を降りると水に着く
食堂の段の上から下の居間を見通す。左に塔の木の格子、正面に薪ストーブと本棚、その先の大きなガラス越しに谷の林
食堂から居間へ朝。次の部屋の光がいつも下に見える
居間。薪ストーブの火、天井まで通る塔の格子と梯子、北の高窓から入る光
居間塔の梯子はここから屋根の上へ。北の高窓の光が梁を照らす
寝室。低い天井の下に寝床があり、正面の屋根の隙間の高窓から林が見え、その下に水の間のガラスが続く
寝室一番低く、一番静かな段。屋根の隙間の帯から林が見え、その下に水の間の光
水の間。石の床と石の浴槽、正面いっぱいのガラスの向こうに谷と林
水の間一番下の段。石の床が縁側まで続き、谷川へ降りる
夜、霧の杉林の中の黒い屋根の段々。段と段の境の高窓に障子が閉まり、紙の格子が内側の灯りで光る。塔の見張り台も灯る
夜高窓の障子を閉めると、段と段の境が紙の行灯になる

作り方

敷地は山の南斜面、勾配およそ 1 対 3.3。上に道路、下に谷川、杉と広葉樹の混じった林。季節は秋の終わり。

地形、建物、開口、家具、木、空、霧、カメラまで全部を一つの Python スクリプトで Blender に組み立て、Cycles で描いた。木は幹から枝を三段に分けて伸ばし、枝先に葉の板を散らしたもの。断面は直交カメラのクリップ面で場面を切り、切り口は材質の裏面を黒く塗って出している。スクリプトは house.py、設計の経緯は plan.md。

← 記事一覧