円を転がすと直線が生まれる—直感に反するこの現象は、13世紀のペルシアで発見されました。この記事では、トゥースィーの対円(Tusi-couple)の原理と、なぜこれが天文学の歴史を変えたのかを解説します。
発見者
ナスィールッディーン・トゥースィー (Nasir al-Din al-Tusi, 1201-1274)
ペルシア(現在のイラン)の数学者・天文学者・哲学者。モンゴル帝国のイルハン朝に仕え、マラーガ天文台を設立。数学、天文学、論理学、倫理学など多分野で業績を残した。
原理
- 大きな円(半径R)の中に、半径がちょうど半分(R/2)の小円を入れる
- 小円を大円の内側に沿って転がす
- 小円の円周上の一点を追跡すると...
円運動しかしていないのに、直線運動が生まれる。これがトゥースィーの対円の核心です。
なぜこれが重要だったのか
エカント問題
古代ギリシャの天文学者プトレマイオス(2世紀)は、惑星の運動を説明するために「エカント」という概念を導入しました。これは「均等な円運動」という当時の哲学的原則に反していました。
トゥースィーの対円は、純粋な円運動だけで同じ効果を再現できることを示しました。エカントという「ずる」をしなくても、惑星運動を説明できるのです。
コペルニクスへの影響
🌍 歴史的な繋がり
コペルニクス(1473-1543)が『天球の回転について』で使用した数学的手法の中に、トゥースィーの対円と非常によく似たものがあります。
200年の時を超えて、ペルシアの知識がヨーロッパに伝わった可能性が研究者によって指摘されています。地動説の誕生にイスラム天文学が影響を与えていたかもしれません。
歴史年表
プトレマイオスが天動説でエカントを使用
トゥースィーが対円を発表
マラーガ天文台設立(フレグの命で)
コペルニクス『天球の回転について』出版
楕円軌道への発展
トゥースィーの対円には興味深い拡張があります。追跡する点を小円の円周上ではなく、小円の内側に置くと、その点は楕円軌道を描きます。
これは後にケプラー(1571-1630)が発見した「惑星は楕円軌道を描く」という法則の幾何学的理解につながります。
現代での意義
💡 この発見から学べること
- 単純な組み合わせから複雑な振る舞い - 円運動を2つ組み合わせるだけで直線運動が生まれる
- 知識の伝播 - 13世紀のペルシアの発見が16世紀のヨーロッパに影響を与えた可能性
- 視覚化の力 - 抽象的な数学を目で見て理解できる
インタラクティブデモ
この原理を視覚的に理解するために、インタラクティブなデモを作りました。複数の対円を同時に表示したり、楕円モードに切り替えたりできます。